PANCRASE興行
日曜日の午後はPANCRASE興行だった。
午前中のイベントをこなし、バタバタの状況でディファ有明に向かった。
試合前の問診も、ネオブラットトーナメントのある今回ばかりは人数が多く、また今回からタイトルマッチの尿検査が加わったので、試合前から忙しかった。
今回の興行の目玉は何といっても石渡伸太郎の復帰戦、タイトルマッチ。
キャリアの中で最強の相手・シウバとの対戦だ。
この日が来るまで、石渡君と何度も何度も会って話しをした。揺れる心も、ぶれない気持ちも、楽観視する心も、警戒する気持ちも...自信も不安もプライドも迷いも...全て感じ取った。
それもそうだ。
世界最高峰のUFCの出場はいつの時代も不透明。 相手に主導権を握られている。でも悔しくてもUFCのチャンピオンが世界のチャンピオン。
諦めかけても、9月には日本大会がある。
日本で有名になりたければRIZINがある。でもここで行われるトーナメントが、世界最強を決めるトーナメントとは誰も思っていない。
でも、話題の中心にいることは事実なのだ。
頑固一徹を貫いても、叶わない夢ならいつまでも追えない。これは現実だ。
格闘技人生のピークなんてそんなに長くは続かないからだ。
だから、やるせないのだ。
そんな事を自分なりに考えると、自分も焦燥感に満ちた。
こんな考えを石渡君にぶつけると、共感してくれた。
こんなに自分に正直に向かい合ってくれる選手は、20年以上格闘技に携わっている中で随一。金原正徳、金ちゃんと石渡君だけだ。
だから彼の中で自分がどういう存在であるべきかがわかってきたところだった。
だからこそ、今回の防衛戦には普通の気持ちでは入っていけなかった。
会場前の穏やかな石渡君に会ったが、完全に腹をくくっている感じだった。
だから、自分の中での”万が一”という不安は払拭され、その不安がいかにお節介で余計な考えだったかは、後になって分かり反省した。
ベルトを肩にかけての入場、その表情。ゲージ上での殺気だった佇まい。これは完成された”石渡伸太郎劇場”だ。 いつ見ても格好いい。
そして試合は、スポーツMMAの真骨頂の試合。スポーツマンライクに正々堂々と高いレベルのMMAを見せてもらった。
相手のすべてを受け切って、自分のすべてを出し切る。
”際”の攻防も、マックスに近いハイレベルなものだった。
観衆も視聴者も、そしてもちろん対戦相手も、全てを納得させる勝利。
殺伐としながらもスポーツマンライクにMMAを体現。入場の佇まい。試合前・試合後の言動...。
荒っぽくみられる格闘技の中で、紳士的な素晴らしいチャンピオン、素晴らしいファイターだと思う。
石渡伸太郎,心から、おめでとう。そして感動をありがとう。
そして、UFCを頑なに目指す朱里選手も、男子の試合の間とはいえ、素晴らしい激闘でチャンピオンになった。
彼女の頑なな夢も、何とかして叶えてあげられないだろうか...。
と、そう思う。
その他もハイレベルな試合が多く、語れば切りがないので、時間を作って誰かと格闘談義で話そうと思う(笑)。
また、今年のネオブラットトーナメントは見応えがあった。
今回は、大きな外傷がたくさんあり、リングドクターとしても大変忙しかった。
だが、大きな事故なく興行を終えられたことには満足している。
リングドクターの仕事と、試合の興奮と、いろんな感情。
自分の中での第六感を刺激され、疲れたけど清々しい気分で帰宅した。
自分も頑張らなければな。