バイバイ

運命の5月23日が過ぎた。誕生日よりもお正月よりもクリスマスよりも開院記念日よりも...何よりも忘れられない、忘れてはならないこの日。  そうです。甲状腺癌の手術をし、克服した、手術記念日なのです。そして、今年が、ぴったり丸10年。記念すべき日なのです。

癌は五年間の生きる率:五年生存率を一つの目安にするけれど、甲状腺癌は進行が遅く、十年生存率を目安にする。  そんなこの日をようやく迎え、当時を思うと奇跡のよう。

執刀してくれた小山教授を筆頭に外科チームのみんなに感謝。そして、支えてくれた家族に感謝。亡くなった親父や歳とったおふくろに感謝。
親父を何一つ超えていないけれど、癌を克服して元気精一杯に生きていることだけは、唯一の親父越えかな?  天国の親父も喜んでくれているだろう。

癌のお蔭で、本当に自分は変わった。何やっても後悔しなくなった。楽しいこと、やりたいことを来る日も来る日も120%でやって、何一つ考え直さない。周りのことなど気にしない。自分に正直に、そして真っ直ぐ生きる。手抜きはしない...

死を考えさせられた28歳。あの時のことを考えたら、全く立ち止まっちゃいられない。いつエンジン切れになっても後悔しないように、先頭集団のトップを走るように全力疾走。やりたいことを残して・セーブして生きても、できなくなったら後悔しちゃうしね。

生まれ変わった11年目の自分。癌よバイバイ。
そして自分は微力ながら、癌の患者さんに今の自分と同じ喜びを与えられるように、これからも精一杯勉強して、診療します。