誇り高き別れ

4年前。大学医局と離れ、一外科部長になった自分に、難題を与えてくれた18歳の患者さんがいた。それ以来、自分は患者さんというより、弟のような感覚で接し、彼も楽しみに?クリニック開業後も診察に来てくれた。そんな入学したばかりのほやほやの大学生だった彼が、この度地元の公務員上級職試験に合格し、凱旋帰郷することになった。
就活中は、応援しながらも、実際は、東京の会社に受からないかな...と、心の中では思っていた。地元に合格したと聞いた時は嬉しい反面寂しかった。
そんな彼が、帰郷前に、スーツケース片手に最後の診察に来てくれた。何だか、自分の息子を旅立たせるような...今までに感じたことのない不思議な気持ちのお別れをした。悲しい別れか、誇り高き送り出しか...。
”僕も頑張りますので、先生も頑張ってください!”
”また、東京に遊びに来ます!”
もう、言葉がなかった。自分を頼りにしてくれてありがとう。元気になって、田舎に帰ってもらえ、僕は本当に幸せです。
彼の門出を応援し、自分も負けじと、また新年度からの気合いが入った。